お金=何か価値のあるものや大切なものの象徴
■第1章 ジャングルは危険がいっぱい 交換の生物的起源
・NASAの試算→人類の誕生から800世代目、そのうち600世代以上は洞窟で暮らし
・活字を見る様になったのはほんの数世代
・人類が存在しているのは地球の歴史全体の0.004%
・人類最大の目的は生き残りである。
・「交換」の重要性
・他の生物同士の交換と人間の交換は区別が必要 違い→交換を意識出来る
・余剰は価値のシンボルとなり、他の必需品と交換されることによって、潜在的な価値を発揮される様になった。
・進化経済学者のハイムオフェクは交換を行う生物は生き残って繁殖する可能性が高い。交換に関わる特性が、未来の世代に受け継がれる。
・交換は進化的アルゴリズムの一部
・シンビオジェネシス→2つの別個の各細胞が統合された後、新しい一つの細胞が形成される
・エネルギー、お金、共に循環し続ける エネルギーを保存していれば、生物は不安定な状況にある程度落ち着いて対処できる
・共感能力の最も優れたメンバーが、最も多く含まれるコミュニティは、最も反映して最も沢山の子孫を残す。
・ロバートアクセルロッド 囚人のジレンマ→相手が協力すればどちらも良い立場を確保できる。肝心なのは相手が協力する様に仕向けること。裏切られたら報復を厭わない方針を鮮明にしておかなければならない。
・肉は植物よりカロリー密度が高い人間の胃袋は他の霊長類の60% 人間の脳は体のエネルギーの20%を消費する12Wに相当する。
■第2章 私の心のかけら お金の心理学的分析
・ウェイターが客から受け取るチップ→天気が良い方が金額が多くなる。
・お金は私たちに刺激を与え、意思決定や行動を促している。
・投資が利益に繋がりそうな人の神経細胞の活動は、コカインやモルヒネでハイになっている人のケースと区別がつかない。
・ナットソン 金融上の決断に、感情は中心的な存在だという事実を認識しなければならない。ポジティブな刺激からは側坐核の機能が活性化され、金融に関して大胆な決断を下す様になる。
■第3章 借金にはまる理由 債務の人類学
・債務には金銭的な義務だけでなく、社会的な義務も伴う
・贈与経済に基づいた家族の領域
・市場経済に基づいた商業の領域
・アダムスミス 分業によって、道具の専門化が進んだが、そのお陰で取引は複雑さを増した。
・贈与 与える、受け取る、お返しをするの3つ
・商業の領域の貨幣と似ているが、貸し借りや取引が人間関係の維持を目的としている点が異なる。
・贈り物が渡されるときにお金のやりとりはないが、友人、知人や社会への恩義という、別の貨幣が流通するのだ
・贈与経済を逃れて市場経済に移行する傾向は、社会的な恩義を回避したい気持ちの強さの現れとも言える。
・お返しには2つのタイプがある。
①義務
親への恩
②義理
1.仲間や親族など世間に対して
2.体面や、評判、名声を守る為の言うなれば自分に対する義理
1はホワイトデー、歳暮、日本独特の習慣が経済に影響を与えている。
■第4章 ハードな手ごたえ ハードマネーの簡単な歴史
・金属主義がハード、表券主義がソフトに該当する
・金属主義はお金の評価は固有の価値によって決まる。物々交換に代わってお金が登場したという前提にたっている。⇆表券主義
・債務や信用供与の制度がお金より先行していた。
・影響力の大きい経済思想家の多くは金属主義の立場。ジョンロック、アダムスミス、ジョンスチュアートミル、カールマルクス等
・語源 キャピタル→頭 サラリー→塩、ローマの兵士は塩の報酬だった。
・原子貨幣→銀、大麦
・硬貨は本物の法定貨幣として、みなから信用されなければならない。
・ハードマネーの改鋳、景気回復の為に有効な貨幣政策→フランクリンルーズヴェルト、ネロが実施
■第5章 ソフトなのがお好き? ソフトマネーの簡単な歴史
・人間が生き残る為にはエネルギーが必要 それを確保し易くするのがお金の本来の目的だったが、今日のお金は抽象的な形に進化を遂げた。
1日の取引通貨量は1990年代末1兆5000億ドル→2010年 4兆ドルに増加 これは株式市場での取引量より多い。
・世界には170種類以上の通貨がある そのうち、通貨取引の85%は米ドル、世界貿易全体の81% アメリカは途方も無い特権を持っている。
例えば、他国は100ドル相当のサービスや現品を提供するが、アメリカは数セントで良い。アメリカの国内総生産は世界の25%だが、海外の中央銀行が保有する準備金の60%近くは未だにアメリカドル。
・信頼性が高く、流動性があって兌換可能な通貨であれば、理論的にはどれでも世界の支配的通貨として機能することが出来る。
・経済が悪化しているときは特に、貨幣の歴史は膨張とインフレに向かう傾向が強い。
・インフレ→物価が上がり、お金の価値が下がる。デフレ→物価が下がり、お金の価値が下がる
・インフレ→時間の経過と共に貨幣の価値が損なわれる貸し手に返済する際の実質価値は額面価値より低くなる。5000万ドル→2800万ドル
・デフレ→貸し手に有利 5000万ドル→9000万ドルになる。国家が唯一の発行者になれば国家の権力は拡大される。
・フビライハンの紙幣→銀によって裏付けられている
・中国の貨幣の歴史 国家が強大になる程制度の信頼性は高まり、貨幣のソフト化が促される。貨幣の価値は金属の固有の価値に由来しなくなる。
・アメリカ 南北戦争前は統一した紙幣はなく、各州が発行していた。関わる金属の種類が少ない程、貨幣の価値は高くなる。
・1900年、金本位制が議会を通過した。
・FRB1913年設立 1907年の世界恐慌を繰り返さない為にレートを下げたいとき増刷した貨幣で国債を購入する。
■第6章 バック・トゥ・ザ・フューチャー
・未来の世界の可能性は3つ
(1)”弱気な展開”金融危機、テロ活動の激化、自然災害などの不安要因が重なり、世界情勢が悪化していく
(2)”強気な展開”現在と同じく技術の進歩や統合が広範囲にわたって急速に進み、世界が巡行に進歩をしていく
(3)”夢の展開”遠い将来、人間と機械の境界線が曖昧になる
・時代が厳しくなると、人々は名目貨幣への信頼を失う。金融が不安定な時代には、物々交換に頼る傾向が強くなるだけではなく、大体通貨が想像される可能性もある。
・2008年のリーマンブラザーズ破綻⇒金価格は125%近く急騰した。2010年には1オンス1800ドル以上に達した。
・2017年12月平均はグラム4631円⇒1キロ4,631,000円
・経済が混乱に陥ると金の信用度は高まる
・人々は銀行制度への信頼を失っても、銀行が想像した貨幣を確保しておきたいと願う。
・ソフトマネーやそれを裏付ける期間を信用できなくなると、人々は往々にして問題の解決を自分の手に委ねる。
・通貨の発行者を信頼せず、自分だけを信じ、生き残るために物々交換という手段を選ぶ。
・物々交換の世界的な組織である国際互恵取引協会に参加する企業は40万社以上
・弱気な展開には、価値を備えたものの退蔵や物々交換が増加する傾向がみられる。
・社会科学者メアリ・メラー 銀行が融資によって特定の個人や企業に分配する貨幣には利息がつけられている。要するに銀行は貨幣をばらまいて金儲けをしている
・貨幣が公共財としての立場を回復する展開を思い描いている。
・ブラジルのポルト・アレグレは市民参加型の予算作成プロセスに何万人もの住民が関わっていて、これからは地域のコミュニティや協同組合、あるいは個人に対し、直接紙幣を発行すべきだとメラーは提案している。既に一部のコミュニティでは問題解決に自発的に取り組み、代替通貨を導入している。
例・ニューヨーク州のイサカアワー イサカアワーは実物資本=我々の能力、時間、ツール、森、畑、川によって裏付けられる。最も注目すべき点は、アワーでの融資には利息が付かない事。
・成功する代替通貨の特徴について、最も重要なのは士王のどの供給業者も通貨を発行できるようになること。そうなれば、貨幣を操作する力がユーザーの手にゆだねられる
・デジタルな代替通貨 FBIは流通するビットコイン全体の3%を所有している。
①貨幣 $
②決済デバイス スクエア
③決済ネットワーク VISA
・電子商取引は紙幣で取引よりコストが30%~50%少ない。
・世界に人口は70億人 携帯電話の契約者数は68億 先進国では128% 途上国でも89%に達する モバイル決済の取引量はカード決済の5%だが、今後は62%~100%の勢いで順調に成長するとマッキンゼーは予測している。
・何百万人もの人がスクエアを利用するのは①仕組みが簡単②決済の時間が短いから
・生き残りに必要な資源を確保して、人間の進化を支える事がお金の本来の目的だったが、お金は抽象的な傾向を強めていく。
・取引は無駄な部分をそぎ落とされ、市場の金融調整手段として制約から解放され、家族間でお金を交換しているような雰囲気が生まれるだろう。
・新しい決済システムからは新しい商品やサービスが生まれる。
・ビジネスを動かすという点では、評判もまた一種の通貨である。イェルプでの悪いレビューなど。
・お金の形は絶えず変化し続けるが、その使い方はどの時代も変わらない。価値の象徴だという事実を忘れない限りは。
■第7章 投資家は天使のごとく
・お金は誕生して以来、富を獲得する手段であることはもちろん、時には価値の象徴や道徳観の試金石になってきた。
・お金はためたり使ったりするだけではない。
・社会の道徳律を尊重する人間かどうかが判断される。
・貧しい女性がわずかなたくわえを寄付すれば寛大な姿勢を評価される。
・要するにお金は価値を表現する手段の一つであり、表現の仕方が重視される。
・200か国2500万人をターゲットにした職務満足度調査では、13%の人しか仕事に夢中になって、感情を打ち込む事をしていない。
・アイン・ランド 『肩をすくめるアトラス』聖書に次いで2番目に影響力の大きな本
・お金に関して、多くの宗教指導者は『少ないほど良い』という精神的論理を擁護している。
・お金も永続的な宗教も、どちらも紀元前800年前から紀元前600年前に誕生したのは、決して偶然では無いという。
・聖書でも、諸悪の根源とされるのはお金を愛する気持ちであって、お金そのものではない。
・生きるためには欠かせないが、命の源ではない。
・ヒンドゥー教はほかの宗教がお金との関わりを否定する中、ほぼ確実に認めている。
・多いほど良いという経済的発想に由来する虚しさを経験しなければ、少ないほど良いという精神的論理の必要性は理解できない。
・外面的な目標から得られる喜びからは、苦しみが生み出される。賢者は快楽の追及に専念しない。
・お金に固執する人生においては、心からの満足感を得られないという事実も学んだ。使い方さえ間違わなければ、お金は誰もが共有できる手段となり、人類の繁栄を促してくれる。
・お金は他人と共有する為に稼ぐものなのかもしれない。
■第8章 貨幣は語る
物事を象徴的に理解できるようになったおかげで貨幣は発明された。
ウィリアム・ウィリー・ヴィラレアル
「今に誰もつまらない人間になってしまう。体内にチップを埋め込まれて。だから大事なアイデンティティを保存するために活動をしている」
■エピローグ
お金は本質的には価値の象徴でもあり続ける。人類は協調的行動や表象的思考能力を手に入れたがゆえに、価値のシンボルであるお金が想像されたのではないか。